Thursday, April 30, 2015

ドイツにおける機会不均等(差別)の扱い (2)

第2節 機会不均等問題を扱う法的基礎

法的根拠は「ドイツ基本法 [1]」中にある.ドイツの法体系の中でこのドイツ基本法は憲法として働くものである.この法律については司法と消費者保護のための連邦省(Bundesministerium der Justiz und fürVerbraucherschutz)から公式な英語版も参照でき,本報告ではそれを引用する.また,日本語への翻訳は本レポートの報告者によるものであり正式なものではないことに留意して欲しい.

ドイツ基本法の第1条は「人間の尊厳 - 基本的人権 - 基本権利の法的拘束力」である:
  • 人間の尊厳は不可侵であるべき.これを尊敬し保護することは全ての国家権力の義務であるべき.
  • したがって,ドイツ国民は基本的人権が不可侵であり,奪われるものではないことが世界の全てにおける,コミュニティーの基本であり,平和の基本であり,正義であることを承認する.
  • 続く基本的人権は立法府,行政部,そして司法に直接適用可能な法として結びつけられる
ドイツの法律では,人々は人間の尊厳を犯してはならない.一方,表現の自由もドイツ基本法の第5条「表現,芸術,科学の自由」により認められている.

  • 全ての人は自由に表現する権利,公に意見を述べ,書き,描く権利を有すべきであり,障害なく自身を一般にアクセスできる情報源から知らせる権利を持つべきである.放送や映画などによる出版の自由と報道の自由は保証されるべきである.検閲はこれを行わない.
  • これらの権利は一般法の規定によりその制限が定められる.その規定とは幼い人達の保護や,個人の尊厳の権利などである.
  • 芸術,科学,研究,教えることは自由であるべき.教えることの自由は基本法への忠誠からいかなる人をも放すべきではない.
したがって,表現の自由は人間の尊厳の不可侵性に制限される.つまり,ドイツではヘイトスピーチは人々の尊厳を犯すが故に罪である.

ドイツ刑法典 [2] は 130条で民衆扇動罪(Volksverhetzung)を定めている.これは民主主義の否定やヘイトスピーチを禁じている.86条a では,刑法典では「基本法に沿わない組織のシンボルの利用(Verwenden von Kennzeichen verfassungswidriger Organisationen)」についての規定があり,ある種のシンボル,例えばナチスの記章など,についても規定がある.

「一般機会均等法 (Allgemeines Gleichstellungsgesetz) [3]」はあらゆる差別についての法律である.それは国籍,年齢,宗教,性,収入,障害,などによるものを含む.

差別はほとんどの場合に重罪として起訴される.重罪(felony) とは強盗,殺人,放火,強姦など,およそ罰金だけでは済まない罪のことである.しかしこれにはグレイゾーンがある.たとえば,ある種の芸術であるというような主張である.しかし,そのような場合には,それぞれのケースが裁判所で判断されることになるだろう.

  1. Bundesministerium der Justiz und für Verbraucherschutz,``Basic Law for the Federal Republic of Germany, English translation version,''  http://www.gesetze-im-internet.de/englisch_gg/englisch_gg.html, (Online; accessed 2015-4-2(Thu))
  2. Bundesministerium der Justiz und für Verbraucherschutz, ``German criminal code, English translation version'', http://www.gesetze-im-internet.de/englisch_stgb/englisch_stgb.html, (Online; accessed 2015-4-2(Thu)) 
  3. Bundesministerium der Justiz und für Verbraucherschutz, Allgemeines Gleichstellungsgesetz, http://www.gesetze-im-internet.de/agg/BJNR189710006.html, (Online; accessed 2015-4-2(Thu))

Thursday, April 23, 2015

ドイツにおける機会不均等(差別)の扱い (1)

2013 年 9 月 5日,私はあるバス停で暴漢に襲われ,救急車で運ばれました.

その日,差別問題に対する私の見方に変化がありました.少なくともその問題について多少は考えるようになったのです.私は互いに憎しみあうよりも,互いに協力することを良しと思います.

その日以来私にはこの問題を解決したいという小さな動機がありますが,しかし私のハートは教育にあるのです.私は教育がこの世界を良くする可能性であることをのんきなほど(とおっしゃって下さってかまいません) 信じています.ですから,私のメインのプロジェクトはいつも教育関係です.しかし,差別問題は私のどこかにひっかかっています.それでいくつかのサブ・プロジェクトが生まれました.

この記事はそのうちの1つです.私は友人達に,ドイツでは差別の問題はどのように扱われているのかを尋ねました.

その調査の結果をこのブログ上で何回かに渡って書いていきます.

はじめに

このレポートは機会不均等問題がどのようにドイツで扱われるか,特に会社や大学でどのように対処されるのかについて紹介する.また,本報告書中では機会不均等問題と差別問題は基本的に同じ問題を異なる言葉で言いかえたものである.公式文書中では機会不均等問題と呼ばれることが多いようである.

まず,第 2 章でこれに関連するドイツの法律を概観する.ドイツ基本法では人間の尊厳が最も重要なものである.そして,差別は他の人の尊厳を傷つける可能性があるが故に差別は罪となる.

第 3 章で差別に関するヨーロッパにおける歴史的背景を概観する.

第 4 章では,差別はどのように対応されるかを報告する.ドイツでは10,000以上の住人のいる街には給与を支払われる機会均等の監視人が必要であり,これが監視の任を負う.また,差別は基本的に重罪であり,警察もこれに対応しなくてはならない.

第 5 章ではドイツの会社における対応を報告する.差別は違法なことであるからドイツの会社自身もこれに対応する必要がある.これに対する組織の1つは Betriebsrad (日本語の正式な訳は不明だが,たとえば労使協議会) がある.Betriebsrad はそれぞれの会社内の組織であり,これは会社内の問題に対応する場合がある.また,会社を越えての組織としてはその業界を代表する労働組合も差別に対処する.

第 6 章ではドイツの大学における対応を報告する.ドイツの各大学には機会均等問題に対応する責任者が給与付きで置かれる.これは大学の規模によって形態が違い,大きな大学ではオフィスのある場合もある.

第 7 章では何が差別となるかの例や,実際の組織の例,報道例について報告する.

なおこの報告は最初に英語で行なわれた.その日本語への翻訳は報告者が行なっているが,報告者は法律用語などの専門家ではないために日本で確立した翻訳ではないかもしれないことをお断りしておく.その場合でも元のドイツ語は報告書中,あるいは参考文献から参照できるようにしてある.