Saturday, September 26, 2015

兎のエゴンと私: 見えない惑星を発見することの不思議さについて (3)

(前回からの続き)

I: 檻の話はどうやらまだまだ続くのかもしれない.でも,それはもっと考えてみたい.そして,最初の天体の話が途中だった.不思議が素敵に変わっていくという話も.

Egon: ...

I: 天体がどう動くのかというのは物が落ちるということと同じということを発見した人がいた.その人の考えにしたがって,ある惑星がどう動くかを計算したら,どの惑星もその通りに動くことがわかった.望遠鏡がないと見えない小惑星というものが新しくみつかって,それも同じ法則に従っていることがわかった.つまり,この太陽系の中をそうやって見ていくと,物は落ちるということが,同じ規則で起っていることが繰り返し繰り返し観測されてきた.

Egon: 君の,いや,人間の世界が太陽系の中に広がっていったと.その中の規則がわかり,望遠鏡で見ると例外がみつからない.

I: いや,例外があったのさ.少し動きが怪しい惑星があったんだ.そこで2つの考えがでてきた.1つは私達の観測してきた他に何かの規則があること.たとえば,万有引力が働かない世界,物が落ちない星がある.つまり,私達の知っている世界の規則が不完全だという考えが1つ.

Egon: ...

I: そして.もう1つは,ある場所にまだみつかっていない惑星があれば,その動きが例外でなくなるというものだ.つまり私達の知る世界の規則は同じだが,単に知らない惑星があるという考えだ.

Egon: その時に君は地球上でない遠くでも物が落ちる規則は同じことを信じて,そこに惑星があると思うわけか.そして惑星が思っているように動いている時には,他には惑星はないと思うわけか.

I: その通り,だから私は惑星がそこに見つかったことを不思議に思わないんだと思う.もし惑星が計算した通りの場所にないとなると,そこには万有引力が働かない,つまり,「物が落ちない」ことが宇宙で起こっていることになる.物が落ちない?  その方が私には信じられない.つまり,見えない惑星が見つからないことの方が私には大問題なのさ.そして見えない惑星がそれでみつかることは,私達が世界の一部が理解できているということをサポートすることだ.私はまだ一貫して世界を持っている.それはさらなる理解の土台となる.それが素敵だと思う.

Egon: 重力の起源はわかっていないのだろう.君が知っているのはそれがどういうふうにふるまうかだけで,なぜかは知らない.君の友人は,もしかしたら,物は落ちない星があってもいいという考えかもしれない.他の原理があって,物が落ちるというのは単なるその原理の一面なのかもしれない.そうでないことが不思議かい? 羽がなくても自由に空の飛べる星なんて素敵じゃないか.最初はあたり前と言ったが,君が見ていること,物は落ちる,ということが宇宙のどこかでは間違っていることだってあるという考えも悪くないと思うね.

I: それには反論できない.わかっているのは法則だけ.コンピュータのプログラムの間違いを直す時,このボタンを押せばクラッシュすることはわかっているけれども,何が間違っているのかがわからないのと似ている.「ボタンを押すとクラッシュするの法則」を知っているだけで,なぜクラッシュするのかはわかっていないようなものだ.だから君が正しい可能性も否定できない.ただ,宇宙をいろいろと見て物理学者達は「宇宙では物は落ちる」と信じることにしたのさ.そして私もそれを信じている.質量保存の法則や,エネルギー保存の法則,慣性の法則とかも似たようなものだ.どうしてそうなるかをわかっている人は多分いない.でも,法則はいつも正しいようなので,もう不思議に思わなくなってしまった.物理学者達は法則の修正をしたりはしたが,法則が根本的に間違いというのはなかなか信じられない.そういう可能性はあるとしても.

Egon: 君の友人がもしそれを不思議に思うとしたら,天才かもしれない.

I: ところで,私にある先生がなぜ物が落ちるのか? と問題を出したことがある.「わかりません」,と答えたら,「重力の法則があるから」が答えだったので,この先生は重力の法則を理解していないことを知ったことがある.

Egon: 名前をつければわかった気になるものさ.君だった私をはじめて見た時,「あれは何?」「うさぎの Egonだよ」「へー,そうなんだ」と言っただろう.私の何に納得したのかい? 私の何を知ったのかい?

I: 名前があると知っただけさ.もちろん君について何もわかっていないことは気がついているよ.生まれた場所から離れて暮らすと,「どこの国から来たの?」と聞かれることは多い.国の名前を答えて,そこから会話が弾むのならともかく,それで私を全て理解したような人もいるのは知っている.君がうさぎと知ったことで私が君の個性を理解したわけじゃあない.

Egon: それはどうも.

I: ... でも,保存則もそうだが,あまりにも不思議ではなくなってしまっている.私にとって,もし,何かがなくなった,ということは誰かが取ったということだ.私の家にクッキーがあって,友人が遊びに来て帰ったらそれがなくなっていたとする.そして私はクッキーを食べていないとしたら?

Egon: 君はクッキーが突然歩いて逃げたとは考えない.友達が食べたと思うわけだ.

I: その通り,私の家の中のクッキーの量は保存する.私はクッキーの保存法則を信じている.誰かが食べない限り,クッキーはそこに存在する.なくなったということは,取った人がいるということだ.見えている惑星が少しおかしく動くのは,そこに見えない惑星があるに違いないと思うのと同じように,私はクッキーがなくなれば,誰かが取ったと信じる.つまり見えないことが,何かあったことの証明になると思っている.

Egon: あるいは君が年をとって,自分で食べたことを忘れるということもあるかもしれない.物は落ちる.もしかしたらクッキーも落ちて机の下にあるかもしれない.

I: その場合でも私が忘れているだけで,私がクッキーを食べてなくしてしまわない限り,クッキーは保存されるはずさだ.そして,机の下はまだ私の部屋の中だ.私の部屋の中のクッキーの保存則はまだ正しい.これは実は, Feymann の「腕白デニス」の話と同じことでね.この話というのは,...

Egon: そう信じることは,また自分の世界に留まることのようにも思えるが.

I: 信じるだけでは自分の世界に留まることになる.でも,その信じたことで世界を見て,自分で考えることで,少し違うかもしれない.何も考えないことが世界に留まることなのだと思う.

Egon: ...

I: 保存則がみあたらない場合がみつかった時,私達は世界の端に到達したことを知るのさ.クッキーが家の中になくなった.どこにも落ちていない.友達は来たが,彼らは食べていないし,取ってもいない.その時,たとえば部屋の温度が少し上がっているとか,部屋の二酸化炭素が増えているとかいうことがもしわかったら,友達がクッキーを燃やしたというようなことがわかるのさ.燃やしてしまってもクッキーは空気中に二酸化炭素として存在している.燃やしたがために少し部屋の温度が上昇した.つまりクッキーは,燃やされてもなくなったのではなく,他の形で保存される.そして保存されるのは実はクッキーではなく,原子というものだということがわかってくるのさ.そうやって科学は進歩してきた.つまり,世界を広げるためには,信じたことと違うことがみつかることが重要なんだ.新しい不思議がそこには必要だと思う.それが科学の素敵な点でもあると思う.

Egon: そして君はまだクッキーの保存則は世界のどの家でも同じだと信じている.信じている点では宗教と同じようだな.

I: 私は科学は一種の宗教だと思う.「人間は宇宙の一部を正しく理解できる」と信じるのが教義だ.ただし,人間が何を言ったかということは関係なく,機械に観測できる形で事実を再現できないといけない,そして常に新しいことを考え続けるということも必要だ.こういう条件があるのが多くの宗教と少し違うことかもしれない.

この後 Egon は私との会話に興味を失なったようだ.私は Feymann の「腕白デニス」の話を説明したが,彼は何も言わずに人参の葉を食べていた.

謝辞


最初の疑問を下さった H.H. に感謝します.不思議について昼休みに私と議論して下さった友人達に感謝します.いつも私自身を考えなおさせてくれる私の小さな生徒であり先生である子達に感謝します.この話をいつも私に inspiration を与えてくれる R.M. に捧げます

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